2017.12.06 Wed | US INFO
妊娠期の体重管理 & ☆季節のクリスプレシピ☆
—はじめまして。
食に関する記事を担当する、管理栄養士の中村理紗と申します。アメリカには主人の駐在に伴い2年間過ごし、その間には妊娠初期から子育てを経験しています(2017年2月末に駐在期間を終えて、現在は日本で生活をしています)。私自身、言葉が通じぬ異国での妊娠期間は、日本との生活様式や食環境、医療システムなどの違いに不安を感じていた一人です。DCやMD、VAに暮らすみなさんへ、DC近郊で暮らした私自身の経験を生かして、より近い立場で食に関するサポートを目指していきます。これからどうぞよろしくお願いいたします。
―妊娠期の体重管理の必要性
妊娠中に赤ちゃんを迎える準備のため、母体にはさまざまな変化が起こります。今回は、その中でも体重に注目したいと思います。
体重の変化は赤ちゃんの重さが単純に加わるだけではありません。母体の血液量の増加(1kg~1.5kg)や、赤ちゃんに栄養や酸素を送る胎盤の重さ(約500~750g)、羊水の重さ(800g~900g)のほか、子宮の筋肉の肥大(1kg~1.5kg)、乳房の哺乳に向けた準備としての膨らみ(500g~1kg)など、赤ちゃんの重さのほかにも、様々な要因で変化が起こります。
妊娠中の体重管理について、『適切な体重管理は、お母さんとおなかの赤ちゃんの長期的な健康のために非常に大切なこと』という考え方は、日米ともに同じです。妊娠前の肥満や、妊娠中の体重の増加量が多いと、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスク、巨大時出産により難産(帝王切開など)のリスクが大きくなります。また、腰痛やむくみも出やすく、妊娠中の身体にも負担がかかります。
逆に妊娠時に痩せ型、もくしは体重増加が少なすぎることは、切迫流産や流産、子宮内での子の発育不全から低体重(2500g未満)が生まれるリスクが高まる、低体重児は成人後に生活習慣病にかかりやすいなどの報告もあります。アジア人は米国人に比べて細身で小柄に見えることもあり、日本ほど体重管理についてはうるさく言われないかもしれませんが、言われないから管理をしなくてよいわけではなく、尚更、自己管理が大切になります。
―自分のBMI値と出産までの目標体重を知る
妊娠時の体重増加量は、妊娠前のBMIの値から定まり、これから妊娠期全体を通した体重増加量を知ることが出来ます。週ごとに体重を測定することをお勧めします。
BIM計算式は、BMI=体重÷(身長×身長)です。まずはご自身のBMIを知りましょう。
以下に日本とアメリカの妊娠期の体重増加の推奨値を記しました。
表から、体重増加の奨励値は特に、『やせ』と『普通』で差があります。日本人に慣れていないドクターに当たると、もっと増やすように言われることもあるかもしれませんが、日本の厚労省から出された日本人に合った推奨量を自分に当てはめて考えましょう。ちなみに、日本人の食事摂取基準では、3kgの子を出産するのに必要な体重増加を11kgとしています。
―必要摂取カロリーについて
体重管理のためには、まず、自分の通常の必要摂取カロリー量を知ることが必要です。通常の必要摂取カロリーは一日の活動量や代謝に左右されますが、最近はネット等で簡単に調べられますので利用してみてください(例えば、30~49歳未満の育児中の主婦や、家事等立ち仕事をする方は、一般的に一日あたり2000キロカロリーほど消費します)。
必要摂取カロリーは、初期:4ヵ月まで、中期:5~7ヵ月、後期:8ヵ月~10ヵ月に分けて考えます。なお、アメリカではⅠ期:3ヵ月まで、Ⅱ期:4~6ヵ月、Ⅲ期:7ヵ月~9ヵ月の分け方となっています。数え方が異なるだけで、妊娠期間は280日で同じです。
①初期:2~4ヵ月
初期妊娠初期は、基本の一日の摂取カロリー当たり+50キロカロリーです。これは、クッキー1枚ほどなので妊娠前とさほど変わりません。(なお、アメリカでは、Ⅰ期での負荷量は必要ないと言われます)
このころは、悪阻(つわり)を経験する方がほとんどです、これはホルモンの変化が要因の一つと言われます。この時期は思うように食事ができず、胎児の発育に影響がでないかと心配になりますが、初期のころはお母さんに蓄えられている栄養で十分に成長できますので大丈夫です。ほとんどの方は3カ月を経過すると次第に落ち着いてきます。食事内容に目を向けるのは体調が落ち着いたころからで良いでしょう。無理はせず心身的なストレスをかけないようにすることが大切です。
②中期:5~7ヵ月、③後期:8~10ヵ月
中期は基本の一日の摂取カロリーに+250キロカロリー、後期は+450キロカロリーです。(アメリカではⅡ期+340、3期452キロカロリー)
お母さんの体調が落ち着き、徐々に食事を楽しめるようになってきます。気を付けたいのが、悪阻後の反動から起こる暴食で、赤ちゃんに栄養をたっぷり送りたい想いから、過食になりがちです。
―食事の工夫
食事はできるだけさまざまな栄養素を取るように心がけます。一日の摂取カロリーを知り、内容の組み合わせを考えます。カロリーの低い料理法や食品、料理を選ぶことで、より多くの食品を食べることが出来ます。
気をつけたいのは、糖分や油分の取り方です。これらはお母さんと赤ちゃんにとって必要な栄養素ですが、ケーキ一つ、クッキーを数枚食べると簡単に一日にプラスするカロリーに達してしまいます。クッキーなどの菓子の糖分やポテトチップスなどの油分はカロリーばかりで、栄養的価値は乏しいものです。おやつも食事の一部と考え、果物やドライフルーツ、ナッツ、スムージー、おにぎりなど、栄養あるものを間食に選ぶことをお勧めします。手作りの例として、季節の野菜や果物にナッツ入りのクランブルを乗せて焼いたものは、エネルギーも低めで、ビタミン・蛋白質、ミネラルを含み、栄養的な価値があります(レシピを下に記しました)。赤ちゃんへ健康的な栄養ある血液を届けましょう。
また、やせ願望から欠食やダイエットを行っている方に関しても、赤ちゃんの発育のために食生活を改める必要があります。欠食し、一食を甘いものに置き換えて食事を抜くことも良い事ではありません。
―最後に
妊娠中は妊娠前と同じような食生活ができずに、ストレスを感じてしまうことがあるかもしれません。しかし、妊娠はこれまでの食生活を見直す絶好の機会です。妊娠中はもちろんのこと、産後は授乳を通して、また、子どもが食事を開始初めて成長して大きくなるまで、健康的な食の知識は必要になるでしょう。産後は赤ちゃん中心の生活に一転します。時には旦那さんとの外食などの時間を楽しみ、メリハリある食生活を送れると良いですね。
☆季節のクリスプ レシピ☆
▶下ごしらえ
- 季節の果物や野菜を選ぶ。今の時期ならsweet potatoes・yam(中がオレンジ色の芋)や、りんご、洋梨が美味。sweet potatoes・yamは輪切りか半月切りにして予め軟らかくしておく。yamの品種は水分が多くべちゃっとしやすいので、少なめの水で蒸すように火を通す。りんごや洋梨は皮をむき、いちょう切り、またはくし切りにして軽く砂糖をまぶす。耐熱皿に乗せる。具材の厚さは8mmほどにする。
- クランブルを作る。All‐purpose flour130g、ナッツ類55g、砂糖70g程度、塩少々、シナモンパウダー少々、バター110gを用意する。ナッツは粗く刻む。バターは良く冷やして刻む。バター以外の材料を混ぜ、刻んだバターを加えて、フォークなどですばやく揉みこむ。ぼろぼろとした質感になったら止める。
▶仕上げる
1を耐熱皿に並べ、2を満遍なく1の上にかける。375℉に予熱したオーブンで色づくまで焼く。
Written by 中村理紗